1 論点
  商行為によって生じた債権につき、公正証書が作成された場合、
 民法174条の2が適用され、時効が10年にならないか。

2 結論
  公正証書の作成に、民法174条の2の適用はない。 従って、
 当該債権に関して公正証書が作成されたとしても、 時効は5年の
 ままである。

3  実務上のポイント
    たとえ商行為によって生じた債権につき公正証書を作成したとしても
 時効は5年のままであることに留意する必要がある。

4 理由
(1)条文
  民法174条の2は、以下のように定める。
   「
確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効
   期間の定めがあるものであっても、その時効 期間は、十年とす
   る。   
    裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するも
   のによって確定した権利についても、同様とする。
   2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権に
   ついては、適用しない。」
(2)判例
  ア 東京高等裁判所昭和56年9月29日判決東京高等裁判所判決時
   報民事32巻9号219頁

    「控訴人は、本件金員貸付については公正証書が作成され、
    公正証書上、被控訴人らによって右貸借による債権が確認され
    、かつ、その債務につき執行認諾の意思表示がなされているから、
    民法一七四条ノ二第一項の規定により、その消滅時効期間は一〇
    年に延長されるものであると主張し、控訴人主張のような公正証書
    が存在することは当事者間に争いがない。しかし、このような公正
    証書上の権利については、
いわゆる執行力があっても既判力がな
    いから、民法一七四条ノ二第一項に規定する
確定判決と同一の効
    力を有するものにより確定したる権利には該当しないと解する
のが
    相当であるかる、右規定の適用はない
  イ 東京高等裁判所判決昭和63年8月22日金融法務事情1231号 
   38頁
  
  「民法一七四条の二が「確定判決」及び「確定判決ト同一ノ効力ヲ有
   スルモノ」に対して確定した権利を対しいるのは、特に既判力によつ
   て債権の存在が終局的に確定されるような場合に限つて時効期間の
   延長を認める趣旨であると解される。
したがつて、民法一七四条の二
   の解釈としては、控訴人の主張するように公正証書を「確定判決ト同
   一ノ効力ヲ有スルモノ」に含めることはできないというべきである。」