新人の時は、不安なので何をするにも、リサーチをする。そして、判断する時は知識をもとに判断する。経験年数が増えるに連れて、経験を基に判断する傾向が強くなる。しかし、これは、よくない傾向である。正確に言えば、経験に頼り、知識をないがしろにするのは、良くない。

一人の弁護士が生涯にわたり処理できる件数などたかが知れている。また、なぜあの事件は、上手く行ったのか、正確に理解し記憶していることはまれである。過去の事件における勝因を間違って理解している場合、経験は、むしろ足を引っ張ることになる。

ひどい事件処理をするのは、例外なく経験豊富で、経験を自慢し、経験をもとに判断するベテランである。事件処理をするにあたり最も重要なものは、経験よりも知識である。経験など何の役にも立たないと思うべきである。

また、経験が増えるにつれ、自分の経験をひけらかしたくなる。これは、絶対にやってはならない。よく、若手の弁護士で、事件を処理できるようになったのを見せつけたいのか、期日で裁判官にあーはいはい、あれね、みたいなことを言う人がいる。上滑り感が出るし、そういう精神状態で仕事をすると、重大なミスをおかすことになる。

やはり、弁護士にとって一番大切なものは、調査及びそれから得られる知識である。経験は、何の意味もない。