最近、保険屋とやりあうのが楽しくなりつつある。起案で疲れたときなど、ストレス発散のために保険会社に電話して、保険屋と喧嘩をしている。
  弁護士に成り立ての頃など、保険屋について、この人たちは、もしかしたら弁護士よりも実戦経験豊富で交渉術に長けているのではないか、などと思ったりしていた。しかし、経験を積むにつれ、徐々に保険屋が交渉上手でもなんでもなく、ただ素人を騙すことに長けているだけであることに気がつく。
 彼らは、実は、交渉が下手である。保険屋は、多くの人々の間にある、交渉が上手と思われがちな人のイメージの人物を忠実に再現はしている。保険屋は、いわゆる弁が立ち、弁によって、相手をいいくるめるという、多くの人がイメージする交渉上手な人間のイメージどおりに、よくしゃべる。内は、筋が通っているかのように見えるが、本当は、間違っている。彼らは、聞きもしないいろいろなことを得意げにしゃべってくれる。
 しかし、多くの人がイメージする交渉上手な人間は、交渉上手ではない。 私の現在までの経験に照らしても、交渉は、相手にこちらの情報を与えず、相手から相手に関する多くの情報を入手することがもっとも肝要であるように思われる。したがって、口数が多い人間は、交渉が上手ではなく、むしろ下手である。
 保険屋は、多弁だが何を言っていいのか、悪いのか、区別がついていない。よって、本来しゃべってはいけないことまでしゃべってくれる。彼らがしゃべればしゃべるほど、こちらに有利な情報が増え、交渉は、こちらに有利になっていく。
 では、なぜ保険屋はよくしゃべるのか。
 まず、彼らの主な交渉相手は、知識のない素人である。そして、彼らは、本来保険会社が支払義務を負う債務を減額することを仕事にしている。このような仕事の内容から、保険屋は、自然と素人を騙すテクニックを身に着けていく。そして、素人相手には、もっともらしいことをよく話すというテクニックは、確かにきくのである。
 しかし、詭弁を見破れる相手に対しては、詭弁を多用した場合、うそを言ったということが、相手にばれれば、必ず交渉では不利になる。そして、さすがに保険屋のうそ程度であれば、どのような弁護士でも見抜く。
 したがって、彼らが一見もっともらしい詭弁を語れば語るほど、彼らは、弁護士との交渉において、不利に追い込まれていく。 
 次に、彼らは、保険会社として、保険金を支払わないことを正当化しなければならない。だからこそ、保険屋は、聞いてもいないことを多々しゃべるのである。しかし、保険会社は、ただ単に、支払いを減らしたいだけであり、彼らの論理に正当な理由などない。保険屋が支払わない理由をしゃべればしゃべるほど、こちらとしては、崩すべき材料が増えていくことになる。
 以上より、保険屋は、結局弁護士に対しては、交渉では、敵わないということになる。 しかし、保険屋ほど生産性もない仕事もめずらしい。保険会社に離職率が高いのも、納得の行く話しではある。