1 弁護士に対する金払いの悪い人ほど、クレームが多い。かかる事実は、私のこれまでの経験に照らしても、疑いがないように思える。逆に、金をしっかりと払ってくれる人は、クレームが非常に少ない。
2 では、なぜ金払いの悪い顧客ほど、弁護士に対するクレームが多いのか。
3 まず、あるサービスに対して、金払いが悪い人は、金を払う必要がないと感じている。弁護士に対する金払いの悪い人は、弁護士の業務に対して、価値を感じていないことが殆どである。そして、当該顧客が、弁護士業務に対して価値を感じていない原因は、複数のものが考えられる。
4 ①まず、顧客が、自分が、そもそも紛争に巻き込まれること自体おかしいと考えているパターンがある。たとえば、交通事故の被害者の方で、過失がゼロである場合や、詐欺の被害にあわれた被害者の方などである。
5 ②次に、医者など、社会的地位の高い人物にも、金払いが悪く、クレームの多いという顧客がいる。その原因は、医者など社会的地位の高い人物が無意識的に弁護士という社会的存在を見下そうとしているからであることが多い。
6 ③そして、単に、当該クライアントが、金に汚いというパターンもある。金を払っているんだからここまでやれや、という考えを持っており、その考えを露骨に出す人である。
7 ③の顧客は、サービス業全般に、よくいる困った客であるが、①の顧客は、弁護士業界に、ある意味特有のクレーマーであるように思える。また、②の医者などは、他のサービス業と違って、ことさら弁護士という社会的存在を見下そうとする点において、やはり、弁護士業界に特有のクレーマーであるように思える。
8 私は、弁護士会などで法律相談を受けると、この人の事件を仮に受任した場合、クレーマーになるなという人を、最初の5分位で見分けられるようになってきた。そういう人に弁護士費用の説明などをすると、大体a高いと露骨に言うか、b勝てますよね、などと私に質問して、私に結果の保証を求めるか、いずれかの行動パターンに出ることが多いように思える。私は、最近は、自分の精神衛生を守るために、高くないですよ、と正直に言うようにしている。
9 また、これまでそういう人の依頼は、やんわりと断っていたが、最近は、正直に受けれません、と率直に言うようになってきた。そういうクレーマーになりそうな人は、受けれないと率直に言うと、別な弁護士紹介してくれませんか、と言ってくる。そして、紹介できませんと言うと、そういう人と若干口論のようになるが、最終的には、そういう人は引き下がる。
10 そういう人は、結局、別に誰が弁護士になってもよいのであり、たまたま目の前にいるので、弁護士を探す手間がはぶけ、また、安く受けてもらえる可能性のある私に、依頼したいのである。そういう人の事件を受けてしまうと、後で多大なストレスを受けることになる。