私は、現在、いくつか国選事件を受任している。それらは、経済的には、全くペイしないものとなっている。
 それでも国選事件を受けるのは、①刑事事件についての経験をつみたいことと、②対応困難な依頼者に対する訓練をつみたいからである。私は、経済的な見返りは、国選には全く期待しておらず、自分の能力向上のみを期待している。
 そして、経済的なことを考慮すれば、国選は、受けるべきではないことは明らかであるように思う。報酬が低額なこともそうだが、非常に時間がかかるのである。
 しかし、私は、最近、自分の能力向上や、自分の仕事の質を維持するという面からも、国選は受けるべきではない、と考えている。
 正直なところ、私は、国選の被疑者又は被告人に対して、全く共感できないことが多い。しかし、弁護人であるので、共感できない被告人の利益を最大化する必要がある。やはり精神的には、どうしても苦痛を抱えながら業務を行うことになる。そのような精神状態で仕事をやっても、いい仕事などできない。そして、国選でよくない仕事をすることで、国選の仕事の質のみならず、他の仕事の質にも影響が出る。
 また、身柄事件は、接見及び移動時間に非常に時間を使う。よって、他の仕事の時間を大幅に奪うことになる。
 たとえば、他の重大案件の書面の締め切りがある時に、必要性のない接見要請が入って、接見に行ったりすると(無視すればよいのかもしれないが)、時間を大幅に取られるので、重大事件の仕事の質に影響が及ぶことになる。
 経済的な面のみならず、自分の仕事の質を保つという点からも、最終的には、国選事件は受けない方がよい。特に精神面で受ける悪影響は、非常に重大である。ただ、民事事件を行うに際しても、特に、告訴や、詐欺の被害回復などの事件では、刑事事件の経験はプラスになるように思うので、もう少し、刑事事件の修練を積むという意味で、国選の受任は継続する予定ではある。
 しかし、国選事件の精神面の負担は、民事事件の比ではない。私は、刑事を専門にされている先生方は、無条件で尊敬する。