1  弁護士選びに迷っている人向けに記事を書く。
2  最近、相談にこられた方に、よく、〇〇専門ですか、と聞かれる。接見に行った際に、被疑者の方から刑事専門ですか、と聞かれたこともある。依頼する方からすると、やはりその分野の専門の人に、頼みたい、という思いがあるのだと思う。
3  そして、依頼者側が専門を求めるようになった背景には、弁護士の側の広告方法の変化もある。一定の弁護士が、私は、〇〇専門であるという触れ込みで、広告を行っている。たとえば、企業法務専門とか、交通事故専門、という奴である。特に交通事故専門を謳う事務所は、最近増加している。
4  実際に、特定の法分野に強い弁護士は存在している。労働者側の訴訟ばかりやってこられて、何件も労働関連の判例を創られたという人はいる。大阪パブリックの所長である某先生などは、刑事事件の第一人者であるし、大阪パブリックなどは、本当に刑事事件に強い事務所に該当する。東京の4大法律事務所などは、非常に細分化されていて、特定の法律の立案から携わってこられて、実際に〇〇法については、日本でもっとも詳しいであろう、という人がいる。
5  しかし、最近の、ネット上の〇〇専門という弁護士が、本当にその分野に強いのかは、注意深く考えたほうがよい。よくよく経歴を見ると、殆ど新人で、専門を語れるような経験が、あるはずがないような人ですら、堂々とネットで〇〇専門を語っている。私の友人など、10件程度しか離婚の経験がないのにもかかわらず、堂々と離婚専門を語っていた。 また、一時期はやった企業法務、債務整理専門という、明らかにコンサルの手の入ったホームページを掲げていた事務所もあるが、そのような事務所が、実際に企業法務を得意としているかは、きわめて疑問である。そのような広告の表示方法及びそのような広告の表示方法を採用していることからして、企業法務を得意としていないと考えたほうがよいかもしれない。
6  また、「私は、企業法務専門の弁護士です」という言葉には、あまり意味がない。意味があるとしても、私には、企業のクライアントが多い、という意味しかない。企業法務という概念が、企業活動に関連する弁護士の仕事を意味しているのであるとすれば、企業法務に含まれる弁護士の仕事には、契約書のチェックにはじまり、M&Aのデューデリジェンス、IPOの際に意見書を書く仕事もあるし、 労務分野の仕事、企業活動に関連する訴訟、売掛金回収、破産、事業再生、投資などさまざまなものが含まれる。企業法務に関連する法分野も、会社法をはじめ、景品表示法、下請法、独禁法、労働法、破産法など、膨大な法律がある。つまり、企業法務分野に関する弁護士の仕事は、およそ一人の弁護士が、極められるようなものではない。
7   企業法務に限らず、弁護士の仕事は、およそ極められるものではないし、簡単に専門を語れるようなものではない。したがって、〇〇専門という呼称は、たとえ、〇〇の分野の第一人者が用いたとしても、一定程度の虚偽性を持つことになる。
8   では、なぜ一定の弁護士が〇〇専門を自称するのかといえば、単純で、依頼者の中には、〇〇専門という自称を信じて、その弁護士に依頼してしまう人がいるからである(かくいう私も〇〇に強い弁護士を自称しているのであるが。)
9   過大広告で実際に懲戒を食らった例があるし、こいつは懲戒すべき、というやりすぎの同業者もいる。〇〇専門という広告を信じるかどうかは、やはりあなたの自己責任である。