1   一度、私ではないが、知り合いの弁護士(以下、「A弁護士」という。)が担当している事件で、弁護士費用特約の支払いについて起こったトラブルを書く。伝聞になるが、内容の迫真性および衝撃の強さから、真実である蓋然性は高いものと考えられる。
2   その案件は、交通事故の訴訟案件であった。依頼者は、弁護士費用特約を使用して、A弁護士に依頼していた。A弁護士と依頼者の報酬契約書上、受任する事件の範囲として、訴訟(第1審に限る)旨が明記されていた
3    第1審において、請求が全額認められなかったため、A弁護士は、クライアントと打ち合わせの上、控訴することになった。控訴審において、着手金として、追加で金5万円を支払う旨の、報酬契約書が作成された。そして、依頼者の弁護士費用特約の保険会社に対し、請求を行ったところ、控訴審段階における着手金の支払いが拒否された。保険会社の支払い拒否の理由は、次のとおりである。
  「第1審の委任状の権限の中に、控訴が含まれている。だから、第1審の段階で支払った着手金の中に、控訴段階の着手金も含まれているはずだ。」 
   正確には、第1審で裁判所に提出した委任状の中に記載されていたのは、 控訴の申し立て、であったそうである。
その点を置くとしても、第1審の報酬契約書上、受任する事件の範囲として、訴訟(第1審に限る)旨の記載がなされている以上、保険会社の上記のような論理がおよそとおらないことは明らかである。しかし、その保険会社の担当者は、やたらと強気であったらしい。最終的には、保険会社の担当者から、強気の姿勢が消え、着手金5万円が支払われたそうである。
4  私自身、A弁護士がトラブルになったのと同じ保険会社との間で、弁護士費用特約の支払いに関して、同様のトラブルを経験をしている。詳しくは、以下のとおりである。
    相手方との示談交渉の段階において、受任事件の範囲として、示談交渉に限る旨の報酬契約書を依頼者と締結した。訴訟段階において訴訟段階の着手金を請求したところ、「前回の支払いに、訴訟段階の着手金も含んでいるはずだ」などと難癖をつけられた。私が、激しく相手の保険会社担当者を問い詰めたところ、その保険会社の担当者は、黙ってしまい、最終的に着手金は支払われた。
5   なお、その保険会社は、日本のトップクラスの保険会社である。最近、なぜか、その保険会社から弁護士費用特約の支払いをめぐって、強気の姿勢が消えているが弁護士から金融庁に対して、情報提供があったのではないか、と推測している。
5   昨今新聞報道(特に日本経済新聞)で、弁護士特約の支払いをめぐって、弁護士の過剰請求からトラブルが多発しているなどと、恰も弁護士に問題があるかのような、報道がされている。しかし、過剰請求を行う弁護士など一部であり、弁護士費用特約に関する多くのトラブルは、LACの基準すら守ろうとしない保険会社が原因で生じているのではないかと考える。
6   加えて、日本経済新聞について、仮に、綿密な取材もせずに、弁護士費用特約に関するトラブルの発生について、恰も弁護士側に責任があるかのような報道を行ったのであれば、報道の中立性という観点から、問題があることを指摘したい。