今回は、被害者側の代理人として、加害者側の損保会社の社員と、示談交渉を行う際の対応を検討する。
 損保社員の示談代行サービスについては、非弁行為に該当するかどうかが問題となる。
 損保会社側の、示談代行サービスが非弁行為に該当しないというロジックは、損保会社が保険金支払義務を負うので、示談代行サービスは、あくまで当事者の立場で行動している、というものである。よって、少なくとも、加害者の代理人として、損保会社の社員が示談交渉を行う場合、損保会社の社員が非弁行為を行っていると考えざるを得ないように思う。 
 しかし、示談代行サービスという名称が示すように、実務上、損保会社の社員が、被害者または被害者の弁護士と交渉に当たる場合、損保会社の社員は、明らかに加害者の代理人というスタンスで行動している。
 つまり、彼らは、法的な側面では、当事者であると主張しておきながら、実質的に代理人として行動している。このように、示談代行サービスを行う損保会社の社員は、当事者なのか、代理人なのか、極めてグレーな立場にある。そして、示談代行サービスを行う損保会社の社員が、法的にグレーであるがゆえに、金融庁に告発された場合、何らかの処分を受ける恐れが否定できない。よって、示談代行サービスが法的にグレーであり、損保会社の社員に対し、非弁行為を行っているのではないか、と指摘することが、損保会社の社員に対する有効な攻撃材料となる。
 一度、少額の事件で、加害者の損保会社の社員と示談交渉を行っていた。私は、損保会社の社員に対し、非弁ではないのか、と問い、代理人なのか、当事者なのかはっきりしろ、相手を問い正したことがあった。損保の社員は、明らかに困っていた。最終的に、こちらの要求が100パーセント通った。