法曹養成制度改革顧問会議第13回会議議事録について、気になったことを書く。
 今回は、法曹人口及び法曹需要に関する調査結果について紹介があったようである。その中で、中小企業が顧問料として弁護士に払ってもいい金額についての調査結果が月984万4000円であったという
吉戒顧問からの発言があった。明らかに誤りだと思うが、企業から月額984万4000円も顧問料取った場合には、特別背任の共犯になりうる。
 
 また、阿部顧問から、これまでになかった問題意識が提起された。
 
阿部顧問「あと、今までと問題意識がやや違うのですが、東大問題になってきたなという感じがするのです。法科大学院にしろ、あるいは学部にしろ、東京大学の学生が非常に多い。これが定着し てしまいますと、今までの司法試験の上に何か特級エリートコースを設けて、特定の大学の人はそちらであるみたいなことになりかねない。東京大学法科大学院自体が崩壊してしまうかも しれませんし、むしろ法科大学院なんか行かなくてもいいのだみたいなことになってくると、 本当に法曹養成の基本を崩すのかなと思っていまして、非常に懸念をしています。」(法曹養成制度改革顧問会議第13回会議議事録18頁)

 若干趣旨が不明瞭である。まず、東京大学の人が非常に多いと言う発言は、予備試験合格者に東京大学出身の人が多いという意味と考えられる。そして、阿部顧問の言う東大問題とは、例えば昔の外交官試験のように、東大→予備試験合格が、最も位の高いエリートになるという事態を想定においているのか?とも思える。阿部顧問は、仮にそのような事態になれば、誰も法科大学院に来ないのではないかという心配しているようである。

 確かに旧司法試験時代、在学中に司法試験に合格したというと、大学内では、かなりのハイステータスであった。私の同期でも、3年次に旧司法試験に合格した人は、神様のような扱いを受けていた。そして、予備試験に在学中に合格すれば、そのような高いステータスを得ることは想像に難くない。

 しかし、司法試験予備試験を在学中に合格した人に対して、旧司法試験在学中合格者又は外交官試験合格者のように高いステータスを付与した方が、むしろ法科大学院の維持には役に立つ。
 すなわち、そもそも司法試験を受ける人、弁護士になろうとする人の多くは、高いステータスを得るために司法試験を受けるのであり、外交官試験合格者のように予備試験合格者に一種の特権的な地位を与えれば、予備試験合格をめざす人は増え、予備試験に合格しない人が法科大学院に行くと考えられ、結果的に法科大学院を志願する学生の数は増える。
 勿論阿部顧問は、このように法科大学院が滑り止めに使われることを阻止したいようにも思える。また、阿部顧問の弁護士に対する知ったことか等の発言を見ると、特権階級を作ること自体、嫌なのかもしれない。

 余談だが、東大法学部の中で進路に序列があったのは、昔(1970年頃)も同じらしい。例えば、官庁でいえば、一番優秀なのが大蔵省、次に通産省一番ダメなのが、自治省に行くというように相場があったようである(東大法学部卒の私の指導担当から聞いた話であり真偽は定かではない。)。しかし、現在の東大法学部の学生の進路は、多様化している。外資系銀行に行くものもいれば、起業するものや、官僚になるもの、法曹をめざすものもあり、昔に比べれば、序列意識は緩やかになっているのではないか。

 また、阿部顧問は一貫してアンチ司法試験予備試験、アンチ旧来の弁護士の立場である。経団連出身の阿部顧問が、なぜ、予備試験制度に反対するのかは分からない。しかし、司法制度改革審議会の頃から、経団連出身の委員は、弁護士をエリートにしてはいけない、という立場であった。経団連が経済的エリートのみがエリートであり、その他社会的なエリートを認めない、という立場なのであれば、経団連の立場は、司法制度改革審議会の頃より一貫している。

 鈴木参事官は、司法制度改革の結果、企業内弁護士が増加したことを紹介しつつも、広がりは限定的(前掲議事録5頁)と述べる。その後、需要拡大のための具体的な取り組みについて述べられているが、期待できるような具体的な取組に関する発言はなかった。

 また、大塲室長より、法科大学院の意義を知らしめるためのパンフレット等を3万部ほど印刷し、大学や予備校に置くと言う発言があった。もともと予備校教育の弊害をあれほど叫びながら、予備校にもパンフレットを置くとは、法科大学院擁護派は、なりふり構わない姿勢である、という印象を受ける。

 吉戒顧問から、予備試験の弊害は主張されているが、法科大学院が自らを振り返ることが少ないという発言。これに対し、納谷座長は、やはり予備試験及び学生に問題があるとの論調である。
 
 全体的に、法曹養成に関するフォーラムの時期よりは、現実的な意見が増えている。しかし、結局座長が法科大学院擁護の立場であり、問題の解決は期待できない。