1  同業者から評判の悪い法律事務所がある。依頼者から不当に金を取りすぎる事務所であったり、およそ正当な弁護活動を行わない事務所である。 しかし、それらの事務所のビジネスモデルは、一般企業の常識に照らせば、至極当たり前のものであることが多い。
2  例えば、某○○専門の法律事務所。 その事務所の報酬体系は、一般的な事務所の報酬と比較して、破格である。しかし、○○の分野に関連する単語を検索すると、真っ先に某事務所のページが出てくる。SEO対策をしっかり行っているのだと思う。また、○○専門をうたうのも、一般的なビジネスの世界においては、特段、新しい手法ではない。
3  ほかにも○○のように、依頼者そっちのけで、相手方の言い値のまま和解して、ひたすら回転率を上げるという事務所もある。しかし、これも、回転率を重視するというビジネスの基本的な考えを前提とすれば、至極当たり前の方法かもしれない。
4 しかし、多くの弁護士は、一般的なビジネスの手法を法律事務所の経営に取り入れることに抵抗がある。一般的なビジネスの手法を、法律事務所の経営に取り入れた場合、事務所の利益と引き換えに、依頼者の権利を犠牲にしてしまうという事態が発生するからである。たとえば、上記のように、相手方の言い値で和解した場合には、事務所としては、売り上げは上がる。しかし、依頼者は、弁護活動を行えば、本来得られるはずであった経済的利益を、得ていない。
5  この点において、一般のビジネスの手法を法律事務所の経営に取り入れた場合、利益があがるのと引き換えに、職務倫理上が発生しやすくなる。
6  しかし、   これら某事務所をはじめとする新興大手法律事務所の優位性は、一般企業においては常識的なビジネスの手法を、あえて弁護士の業界に取り入れた点にある。端的にいうと、誰もやらなかったことではなく、誰もがやってはいけないと考えていたこと、をあえてやってしまった点に、これらの事務所の優位性がある。たたかれるのは当たり前である。