判例紹介
調停での合意で面接交流が認められたのに、元妻が子供に
面接させてくれない場合に、債務不履行責任に基づく損害賠償
請求が認められた事案(東京高等裁判所平成22年3月3日家庭
裁判所月報63巻3号116頁)
□ 事案
面接交渉の調停における合意に違反して、元妻が元夫
に長女との面接交渉権を侵害したとして、元夫の元妻に
対する債務不履行による損害賠償請求が認められた事案。
□ 争点
元妻が、元夫に長女と面接交渉をさせなかったことにつき、
正当な理由があるか。
□ 判旨
「控訴人は,面接交渉の際,被控訴人と長女が二人だけで会う
ことについて繰り返し長女に問い,促すこともしていたが,長女
自身が拒み,実現しなかったと主張する。しかし,平成17年×月
以前に長女自身が被控訴人と二人だけで会う面接交渉を拒んで
いたと認めるに足りる証拠はなく,控訴人は原審において長女と
二人だけで会わせることに納得がいかなかったと供述しており,
そのために被控訴人と長女だけの面接交渉が実現しなかった
ものと認められるのであって,面接交渉の態様に関する被控訴人
の要求等が控訴人において面接交渉を拒絶することを正当化する
理由とはならないとした原判決の判断に誤りはない。 」
「控訴人は,本件合意は,月1回以上の面接を認めるという第1項と
学校行事への参加等について協議するという第2項から成っており
,被控訴人が第2項の協議を無視しているのに,第1項の面接を強
制される関係にないと主張する。しかし,上記第2項は,被控訴人の
学校行事への参加等について,その円満・円滑な実現のために話合
いをすることを定めたものであって,父親である被控訴人による長女
の学校行事への参加等について,その権利を原則的に否定したもの
と解することはできないところ,被控訴人が控訴人に対し学校行事への
参加について協議を求めても控訴人はこれに応じなかったのであり,
被控訴人は事前に事情を述べて学校側の承諾を得た上,学校行事
に参加しているのである。そして,参観時に被控訴人が長女の近くに
長く佇立していたなどのことが9歳の小学生であった長女には恥ずか
しく感じられたことは推認に難くないが,それは被控訴人の態度,対応
のぎこちなさであるにすぎず,学校行事が年のうちでも限られた回数で
あることからすれば,控訴人との協議が整わないのに被控訴人が長女
の学校行事に参加したからといって,本件合意に基づく面接交渉を拒絶
する理由とはならないというベきである。
「控訴人は,そもそも本件合意の内容が公平でなく,不当である
と主張する。しかし,一般的に見て本件合意が公平を欠く内容の
ものであるということはできないし,本件合意当時,長女が7歳
(小学2年生)であったことや,平成14年×月×日,控訴人が長女
を連れて別居し,同年×月×日,被控訴人が面接交渉を求める
審判を申し立てその調停において本件合意が成立したという
本件合意成立の経緯(乙3)に照らしてみても,本件合意の内容が
公平を欠き,それ故に控訴人の不履行もやむを得なかったという
ことはできない。」
調停での合意で面接交流が認められたのに、元妻が子供に
面接させてくれない場合に、債務不履行責任に基づく損害賠償
請求が認められた事案(東京高等裁判所平成22年3月3日家庭
裁判所月報63巻3号116頁)
□ 事案
面接交渉の調停における合意に違反して、元妻が元夫
に長女との面接交渉権を侵害したとして、元夫の元妻に
対する債務不履行による損害賠償請求が認められた事案。
□ 争点
元妻が、元夫に長女と面接交渉をさせなかったことにつき、
正当な理由があるか。
□ 判旨
「控訴人は,面接交渉の際,被控訴人と長女が二人だけで会う
ことについて繰り返し長女に問い,促すこともしていたが,長女
自身が拒み,実現しなかったと主張する。しかし,平成17年×月
以前に長女自身が被控訴人と二人だけで会う面接交渉を拒んで
いたと認めるに足りる証拠はなく,控訴人は原審において長女と
二人だけで会わせることに納得がいかなかったと供述しており,
そのために被控訴人と長女だけの面接交渉が実現しなかった
ものと認められるのであって,面接交渉の態様に関する被控訴人
の要求等が控訴人において面接交渉を拒絶することを正当化する
理由とはならないとした原判決の判断に誤りはない。 」
「控訴人は,本件合意は,月1回以上の面接を認めるという第1項と
学校行事への参加等について協議するという第2項から成っており
,被控訴人が第2項の協議を無視しているのに,第1項の面接を強
制される関係にないと主張する。しかし,上記第2項は,被控訴人の
学校行事への参加等について,その円満・円滑な実現のために話合
いをすることを定めたものであって,父親である被控訴人による長女
の学校行事への参加等について,その権利を原則的に否定したもの
と解することはできないところ,被控訴人が控訴人に対し学校行事への
参加について協議を求めても控訴人はこれに応じなかったのであり,
被控訴人は事前に事情を述べて学校側の承諾を得た上,学校行事
に参加しているのである。そして,参観時に被控訴人が長女の近くに
長く佇立していたなどのことが9歳の小学生であった長女には恥ずか
しく感じられたことは推認に難くないが,それは被控訴人の態度,対応
のぎこちなさであるにすぎず,学校行事が年のうちでも限られた回数で
あることからすれば,控訴人との協議が整わないのに被控訴人が長女
の学校行事に参加したからといって,本件合意に基づく面接交渉を拒絶
する理由とはならないというベきである。
「控訴人は,そもそも本件合意の内容が公平でなく,不当である
と主張する。しかし,一般的に見て本件合意が公平を欠く内容の
ものであるということはできないし,本件合意当時,長女が7歳
(小学2年生)であったことや,平成14年×月×日,控訴人が長女
を連れて別居し,同年×月×日,被控訴人が面接交渉を求める
審判を申し立てその調停において本件合意が成立したという
本件合意成立の経緯(乙3)に照らしてみても,本件合意の内容が
公平を欠き,それ故に控訴人の不履行もやむを得なかったという
ことはできない。」
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