弁護士が提出した証拠を、裁判官が不要と判断することは実務上多い。また、裁判官は、よく弁護士の書面に対して、争点に関係のないことは書くなと意見をする。加えて裁判官は、不要な証拠、特に人証はできる限り排除しようとする。例えば、人証を多く申請すると、裁判所都合で尋問時間を取れないとか、この事件で、尋問に半日も使えないなどと言われて、却下されることがある。
 弁護士の目的は勝訴することである。従って、たとえ関連性があるかどうか、微妙な証拠であっても、有利になりうる可能性のある証拠は全て提出しようとする。また、同じく関連性があるかどうか微妙な事実であっても、有利となる可能性のある事実は、なるべく主張しようとする。そのような弁護士の訴訟態度は、ある意味当然である。
 一方で、裁判官が、明らかに不要と考えられる証拠以外の、関連性があるかどうか微妙な証拠の採用に消極的である理由はよくわからない。弁護士からすれば、頭から、この証拠・人証は不要である、などとして、結論を決め付けてしまっているように見える。外部から見ると、裁判官は、忙しいので自分の作業を減らしたいようにも見えてしまう。
   しかし、確実に不要であることが明らかな証拠はともかく、関連性の程度は弱くても、何らかの関連性があると考えられる証拠についてまで、忙しいことを理由に、証拠調べ不要とするのはいかがかと思う。特に、裁判官は、検証を採用したがらない傾向にあるように感じるのは、私だけではないであろう。