AさんとBさんは、ともに甲さんの息子です。
甲さんは、死ぬ間際に次のような遺言を残しました。

「Bに対して、私の全財産を譲る」 ―①

Aさんとしては納得いきません。Aさんは、遺留分減殺請求訴訟
をすることが考えられます。一方、Bさんを被告として、遺言無効
確認訴訟を、提起することも考えられます。

遺言無効確認訴訟とは、要するに、①の「Bに対して全財産を
譲る」旨の遺言が、無効であることを、裁判所に確認してもらう
ことを求める裁判です。

この仮に、Aさんが勝訴すれば、Bさんに対して、①の遺言が
無効であることを主張できます。よって、Aさんは、甲さんの
財産につき、法定相続分の割合で相続したことをBさんに
主張できるのです。

では、どのような場合に、甲さんの遺言が無効となるのでしょうか。

遺言無効確認訴訟が提起されるのは、甲さんが、認知症で、正常な
判断能力がなかったのではないか、と疑われるケースです。

端的にこれ、という判断基準はありません。甲さんの遺言をした
時点における、認知症の進行具合や、周囲とのコミュニケーションを
取れていたか、 変な行動を取っていなかったか、他の人に、
無理やり遺言をかかされていなかったかといった、様々な事情を
総合的に考慮して、 甲さんが遺言をする能力があったかどうか
が判断されます。

では、どのように、Aさんとしては、甲さんの遺言能力がなかったことを
どのように立証すればよいのでしょうか。 

一つ有力な証拠となるのは、長谷川式簡易スケールという認知症の
進行具合を確かめるテストです。認知症になったお年寄りの多くが、
このテストを受けています。また、医師のカルテ、診断書など、医療機関
関係の証拠は、非常に重要になります。 

また、甲さんが介護施設にはいっていらっしゃった場合には、介護施設
では、ヘルパーさんが甲さんの日常生活を記録していますので、
これを用いることが考えられます。

Aさんが甲さんと同居しており、介護されていたようなケースでは、日記
などが、良い証拠になるでしょう。

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