通常、宅建業者の方々が、売買の間に入る場合、買主又は売主のいずれか(あるいは双方)と媒介契約を締結します。その際、買主又は売主は、間に入ってもらった宅建業者の方に仲介手数料を支払います。宅建業法上、仲介手数料は上限が決められています。
 
 しかし、実務上結構な頻度で、間に入る宅建業者の方が、媒介契約ではなく、売主から不動産を買い取って、それを更に買主に転売するという転売形式の契約を選択されるケースが見られます。この場合、多くのケースでは、間に入る宅建業者の方は、宅地建物取引法の上限額以上の利益
(転売差額)を得ます。
 
 福岡高等裁判所平成24年3月13日判決判例タイムズ1383号234頁は、次のように説示し、宅建業者が顧客と媒介契約によらずに売買契約により、不動産取引を行うためには、売買契約によるべき合理的根拠が必要であるとしました。

「宅建業法46条が宅建業者による代理又は媒介における報酬について規制しているところ,これは一般大衆を保護する趣旨をも含んでおり,これを超える契約部分は無効であること(最高裁昭和44年(オ)第364号同45年2月26日第一小法廷判決・民集24巻2号104頁参照)及び被控訴人らは宅建業法31条1項により信義誠実義務を負うこと(なお,その趣旨及び目的に鑑み,同項の「取引の関係者」には,宅建業者との契約当事者のみならず,本件のように将来宅建業者との契約締結を予定する者も含まれると解するのが相当である。)からすれば,宅建業者が,その顧客と媒介契約によらずに売買契約により不動産取引を行うためには,当該売買契約についての宅建業者とその顧客との合意のみならず,媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり,これを具
備しない場合には,宅建業者は,売買契約による取引ではなく,媒介契約による取引に止めるべき義務があるものと解するのが相当である。」

 間に入った宅建業者は、不動産の売主に対して転売によって得た利益と宅建業法上の報酬上限額の差額を返還しなければならない可能性があります。転売代金の金額が大きい場合には、利息が非常に大きくなり、結果として、大きく損をする可能性があります。

 間に入る宅建業者の方は、このようなリスクを念頭に置かれた方がよいと思います。類似の判例としては、浦和地判・昭和58年9月30日(判タNo520-166)、東京地判・昭和37年4月23日(ジュリストNo868-88)があります。

関連記事 家賃滞納
賃料増減請求訴訟の既判力
明渡の裏ワザ