詐欺の被害に遭われた被害者の方に、被害回復のために、代理人として債権回収を行うという仕事がある。しかし、詐欺の被害にあわれた方に対して、被害を十分に回復することは、相当に難しい。詐欺の加害者は、被害者から騙し取ったお金を使ってしまっていることが多く、また、ほとんどのケースで、詐取した金銭を隠匿しているため、加害者から回収を図ることが難しいからである。そして、有効な被害回復のための手段の一つが、刑事告訴を行うことである。告訴されるまでは、一向に被害弁済に応じようとしなかった加害者が、告訴され、起訴されると、態度を変え、被害者に積極的に被害弁償をしてくることがある。被告人が、十分な被害弁償をしているかが量刑を決定する重要な要素となるからである。私が携わったケースでは、被告人が、起訴された詐欺の被害金額よりも多くの金額を弁償したケースがあった。もっとも、詐欺の加害者の中には、刑務所に入ることを覚悟で、犯行に及ぶものもいる。そのような場合には、被害回復はきわめて困難となる。